こんにちは、税理士の北本です。
ご主人が亡くなられた場合には、まず相続税の申告が必要かどうかが頭に浮かびますが、財産を相続すると相続税がかかように、遺族年金についてもなにかしらの税金がかかるのではないかと考えておられるかもしれません。
遺族年金を受給することができるようになる場合、遺族年金について確定申告をしなければならないか気になるところです。
そこで今回は、遺族年金にまつわる税金と確定申告について、遺族年金受給者が扶養親族になることができるかについてお伝えします。
遺族年金と税金
結論から申し上げますと、公的年金である国民年金、厚生年金から支給される遺族年金は、非課税所得として所得税や住民税がかかることはありません。
同じく公的年金である国民年金、厚生年金から支給される老齢年金については、雑所得として課税されますが、遺族年金は残された家族の生活保障の観点から遺族に支給される年金であるため、非課税所得となっております。
非課税所得ということは、遺族年金の受給額の大小に関係なく所得とはならないため、遺族年金をたくさん受け取ることになっても税金を納める必要はありません。よって遺族は税金による目減りを心配することなく生活費に使用することができます。
遺族年金と確定申告
上記で述べた通り、遺族年金は非課税所得であるため、所得税を納める必要がありません。つまり所得税を納める手続きである確定申告については、する必要はないのです。
ただし、遺族年金を受給している人について確定申告が不要というわけではなく、遺族年金以外に収入を得ている人については、他の方と同じように一定の所得について、確定申告をしなければなりません。
その場合には、遺族年金の所得を除いたその他の所得に対して税金がかかることになります。
遺族年金と扶養親族
例えば元々夫の扶養親族であった妻が、夫の死亡後は息子夫婦などの扶養親族となる場合があります。夫の死後、妻はパート勤め、息子さんはサラリーマンとして、所得税と社会保険の扶養親族の取り扱いはどうなるでしょうか。
遺族年金受給者の母親を扶養親族として迎えるとした場合の、所得税と社会保険の取り扱いを比較しながら確認していきます。
所得税の取り扱い
所得税では扶養控除といって、扶養親族がいる場合には、納める所得税を少なくしてくれる制度があります。
扶養親族は、生計を一にしていて、年間の所得金額が38万円以下(給与収入であれば103万円以下)であれば、世帯主の所得税の計算の元になる所得から一定額を控除することができるので、節税をすることができます。
それでは遺族年金による所得は、上記の所得金額に含まれるのでしょうか。
遺族年金は扶養控除の要件となる所得についても、所得とはみられないため、遺族年金の金額に関わらず、息子さんの扶養親族となることができます。
ただし、遺族年金については所得とならないだけで、パート収入による所得金額が38万円を超える場合には扶養親族となることはできません。
社会保険の取り扱い
次に社会保険における取り扱いを見ていきます。
息子さんがサラリーマンで社会保険に加入していた場合、母親の収入が少なければ、息子さんの社会保険の扶養親族となることができます。扶養親族として認められれば、社会保険料を別途負担することなく社会保険のサービスを受けることができます。
社会保険における扶養親族についても、収入要件が存在します。
この収入要件は先ほどの所得税の所得要件とは異なり、扶養親族の収入の計算上、遺族年金も収入に含まれてしまいます。
社会保険において扶養親族となるためには、遺族年金とパート収入を含めた年間収入が130万円未満(60歳以上の人か障害者については180万円未満)で、世帯主の収入の1/2未満である必要があるため注意が必要です(同居していない場合には、扶養親族の収入が世帯主からの仕送りを超えていないことが必要)。
上記の収入を超えた場合には、扶養親族になれないため、ご自身で社会保険料を負担する必要があります。
まとめ
遺族年金については、非課税所得として税金が課されず確定申告をする必要はありません。
扶養親族の観点からは、所得税については遺族年金の額を所得としてみないため、その他に所得がなければ扶養親族として扶養控除の適用を受けることができます。
一方社会保険のについては、遺族年金の額も含めて収入金額をみるため、遺族年金とその他の収入の合計額を考え、扶養の判定をしなければなりません。
その結果、所得税では扶養に入ることができるが、社会保険では扶養に入ることができないというケースもあります。
父親の死亡により母親が一人になり、今後同居することを検討している場合などは、母親の遺族年金の金額と、その他の収入金額がいくらくらいあるのかを確認し、所得税と社会保険の扶養親族にできるかを慎重に検討していただきたいと思います。